. 行政書士組織論: 行政書士の1人法人化について論考(3)

2020/01/25

行政書士の1人法人化について論考(3)

お疲れ様です、塩谷です。色んなことやっていてブログにもご報告すべきかも知れませんが、すっげえ忙しいです、に留めておきます。このシリーズが始まり3回目だが、早くも少し飽きたので間が空きました。続けます。

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前回は、行政書士法人の社員は労働者性がないから扱いが難しい、のところまで行きました。今回はまた社員の話で、無限責任について検討したいと思います。

結論を先に書くと、根本的な解決策はないです。法令上無限責任が続くのが社員でなくなってから2年だから、塩谷が所属していた旧法人で2年前に発生した全く認識していない案件がもし仮に今更燃えたら、俺賠償責任が発生することになるよね笑

このシリーズでは何度も触れていますが、行政書士法人は合名会社をモデルにしてできています。普段仕事をしていて合名会社と出会うことはかなり稀ですが、我らが行政書士法人はこれなんですね。それで、このことに使いにくさの根本の原因があると思います。完全に時代に合ってないです。

前回の稿でも見たとおり、行政書士事務所を法人化する際、事業の全責任を負う立場、覚悟、その他諸々を受け入れられる人が複数いることは稀です。多くは社長がいて、他に幹部ではあるが対外的な責任範囲を限定される社員がいるケースが想像に難くないですね。ですが、行政書士法上は、つまり制度としてはそうなっていません。登記上の社員が複数いる場合、対外的に全員が全責任を無限に負うことになります。これシビアですよねー、挙げればキリがないほど難点があるので省略しますが、この点だけ取っても、法人化するなら社員はギリギリ必要最小限にするのが合理的な解になります。

それで1人法人ですね、無限責任社員を必要最小限(1人)にできる点だけ見ても、いいんじゃないかと思います。これまで様々なご同業から、法人化したいができない障害の1つに「社員にできる資格者を見つけられない」と聞きました。つまり無限責任を負わせられるくらい致命的な信用関係をつくれる相手がいないという意味だと思うんですが、1人法人化が可能になれば、行政書士さん1人が自分の責任で法人運営をすれば良いので、致命的なパートナーは不要になります。

塩谷の見聞の範囲だけでも、このパートナー問題で法人化をためらっていた方が結構いらっしゃるので、単に法人格を得る目的のためであれば、法改正によりガバッと行政書士法人の数は増えるでしょう。よく言われるように、法人化しないとできない作業であり法人化の一番のメリットとして複数営業所を開設できることが挙げられ、実際僕もそうだと思いますが、1人法人の場合はこのメリットは享受できません。営業所に社員たる資格者を配置しなければならない条項は改正されないから、法人化するだけでなく営業所を複数設ける場合には、やはり無限責任社員を配置して2名以上社員の体制にしなければならない。

なのでもし行政書士事務所を拡大発展させる目的で法人化するのであれば、1人法人化が可能になっても、結局はゆくゆくは無限責任社員を複数置いた体制にならざるを得ないです。論旨からずれていくのであまり深掘りしませんが、東名阪北九州くらいの大都市圏を除く、としておきます。これら大都市圏を基準にして考えると論拠が色々ぶっ壊れます。これら大都市圏はその他商圏をそれほど意識しないでも自活できますが、日本の大部分はそうでない田舎の集合体なんで、大都市圏行政書士法人は1人法人(つまり本店1こ)でも事業拡大が理論上可能、他の商圏の行政書士法人は1人法人をつくってもいずれ商圏を拡げざるを得ない(地元にそんないっぱい仕事ない)からゆくゆく複数無限責任社員の体制になっていくであろう、発展しようとする限り。

塩谷の元々の本拠地は仙台なので、「仙台結構都会ですよねー、仕事いっぱいあるんじゃ?」と言われることもありますが、限界アルネー。特に弊社は東京オフィスもあるから如実に感じるのだと思うが、日本の地方(田舎)ってほんと疲弊してますからね。まして日本のほとんどのエリアは仙台より相対的に僻地なので、東京発の情報だけを基に行政書士事務所を経営しようとするときっと痛い目を見るぜ、お気をつけ。

(分かってると思うが一応補足しますが、「神戸だって都会じゃん」「横浜入れないの」などはずれてます。大枠で神戸は大阪経済圏だし横浜って東京や)

やっぱ少し話がずれてしまいました。行政書士と日本経済圏の話になると俺熱くなっちゃうもので、別の機会にします。行政書士法人には無限責任というマターがあり、1人法人が可能になることでこの点をケアできる余地ができるが、このマターをクリアできるだけで、多くの場合はいずれ複数社員制に移行していくケースがある(しかも結構ある)のではないか、と思われます。

最初に書きましたが、この無限責任という点を根本的に解決する方法は、現行法〜改正法上ないです。じゃどうすればいいかと言うと、そのリスクに見合う金払うしかねえという身も蓋もない結論に行き着きますね笑。全然笑えないんですが本当にそれしかないので、いっぱいお仕事して、またしてもらって、事業が続くように売上を作っていくしかない、発展させるしかないというところに着地してきます。

今回は以上です、次に続く予定ですがテーマ未定です、ではまた!