. 行政書士組織論: リモートワークの要諦 / ただし士業に限る

2020/04/11

リモートワークの要諦 / ただし士業に限る

ども、お疲れさまです、塩谷です。

コロナ禍はヤバいとしか言いようがないのですが、弊社東京オフィスは絶賛テレワーク中です。戦時体制の中で士業事務所のリモートワーク、テレワーク導入について知見まとめておきたいと思います。想定は大体スタッフ数5人〜20人くらいの行政書士事務所前提です。細かいハウツーは書いてないよ、こういう考え方で取り組むといいんじゃないか、という話です。

今更そんなことをまとめて何になるのかって話ですが、塩谷がこの業界のこのレベル感で人様にシェアできるものってこのくらいしかないので、ごめんね。経営全体のことや営業手法のことなどよう分からんが、こういう管理オペレーション系の話はまあまあだと思う、俺。


最初に余談を入れておきます、インターネットがある世界で行政書士事務所を開業した人は、ほぼ全員がセルフテレワークっていうか、最初に1人しかいなかっただけですが、基本的にどこでも仕事できる基礎教養があるはずです。だから過去に独立体験をしている人は「まあ俺どこでもできるし、なんなら地獄でも」という感じで、あまりテレワーク等については悩んでないと思いますね。

しかしどうなってんねん、俺開業してから14年くらいですが、その間に東日本大震災(仙台オフィス)とコロナによるシャットダウン(東京オフィス)両方直撃してるんですけど。こうなりゃ怖いものなんて何もねえ。

では行きます。大本にある基本思想として、たかだか20人くらいの集団でリモートなどする場合、処理や場所は分散しても良いが、管理は1ヶ所(1人)にまとめるべきだね。管理の冗長性はチームの緩みに直結してリモート破綻すると思います。つまり全体の設計を全部理解している人が1人は必要だと思われるね。

PC


ノートPCですね。あるいは今ならSurfaceでもいいですね。Surfaceはタブレットと印象をお持ちの方も多いと思いますが、あれは事実上ノートPCです。いわゆる普通のノートPCとの一番の違いはキーピッチ(キーボードの間隔)とか取り回しとかの主に躯体の部分だと思います。士業ユースで考えればスペックは無視できるレベルです。

この後にも出てきますが今はウェブ会議前提でモノ選んだほうがいいと思いますが、Surfaceはカメラ、マイクが標準でついているので、これ1台あればタイピングしながらウェブ会議もできます。色々くっつけてスタッフに渡す前提だと1台ぴったり10万円ですね。その他としては、LTEを内蔵するかどうかを検討材料にすれば良いのでは。

うちの会社では、これを見越していたわけではないのだが、スタッフは基本ノートPC+外付けモニタという構成を作っていたので、テレワークになる面子は最悪ノートPCだけ持って帰らせるかたちで対応できます。Surfaceも何台かある(実は俺は使ったことないからよく知らん)。

NAS+VPNなど


データをどこに置くのか問題があります。総じていえば情報全般のことですね。この議論でよく持ち出される理屈が、「クラウドはセキュリティが心配」「顧客応報をネットワーク経由することの云々」ですが、はっきり言ってどこに何を置いてどんなセキュリティしても、漏れるかどうかで言えば絶対漏れますよ。セキュリティが破られるという意味ではデジタル情報が漏れることと事務所に泥棒が入ることは同質のもので、後は確率の問題でしょう。

ということでDropboxやGoogleドライブなどのクラウド型のストレージサービスでも、NASにVPN設定して運用する方法でも、本質的にどちらでも変わらないと思います。後は使いやすさや集権化の程度、業務オペレーションの設計思想の違いなどではないかと。

士業のチームで使うことを前提にすれば、一般に士業の方はこれ系のサービスの使用方法や運用など苦手な方が(他の業界との比較として)多いので、クラウドストレージのほうがいいのかもね、という気がします。色んな方がサービスを使う前提で作られているので、簡単に言えば簡単なんですよ、使うのが。同時に触る人が増えれば増えるほど、想定外のユニークなことをしてくる確率(恐れ、ともいう)が高まるので、大体何をやってもリカバリーが効くということで、クラウドストレージが合理的な場合が多いんじゃないでしょうか。

ちなみに、僕の会社のビジネスモデルに限りますが、士業ワークの生命線は「情報の連続性」です。このことと物理的な制約を天秤にかけて、当社では全ての案件書類を電子化、いわゆるスキャンデータとして保管しています。同様のモデルでスタッフ10人〜になると、スキャンをクラウドストレージに置くことが不可能になる(金がかかりすぎる)ので、ほぼ必然的にNASになってゆくんじゃないかと。

(でもさ、僕には不思議なんですが、情報の連続性を無視しても事業が成立する世界があるって知ってます?東京です。日本中で東京だけはここが違うので、出来上がるビジネスモデルが全然違うのね、東京のイケイケの奴らと話すとほんとビックリしますよ。それで、コロナ後の世界では恐らくこれも変わるんですね、どう変わるかは知らん)

(更に付言すると、新人くんやこれから独立しようとする方は、士業のビジネスモデルや成功例などの本、ウェブなどを、その世界に住んでる人たちが主に書いていることを知っておいたほうがいいです。もちろん通用しないって意味でも間違えてるって意味でもない、田舎には田舎のルールがあることを早く理解したほうがいい。遊びのルールを理解しないとゲームには勝てない)

電話とかメールとか


チームが1つの場所で仕事する分にはあまり顕在化しないのだが、空間をシェアしていないと、チームのメンバーが何をしているのか雰囲気で伝わらなくなるので、非言語的な情報が共有できなくなるのだ。電話、メールなどは直通のように見えて、実は空間を共有しているメンバーが何となくそれを共有しているはずで、リモート在宅テレワークはその余白がなくなるので、情報を共有する意識をいつもより3倍増しくらいに持たなければ、案件は一気にタコツボ化する。

各自持ち携帯、各自持ちメアドは部分最適的になっていくのかと思います。抽象的ですが、チーム持ち携帯やメアドのほうが、今の時代の行政書士事務所には合理的な可能性があるなと。言わずもがなですが、電話の回数は減らす方向のほうが現代的です。

ウェブ会議


お客さんとウェブ会議ができるかどうかは、どういう事務所かによると思います。ただ進捗会議や外部業者とのMTGはウェブ会議でできるでしょうし、やるべきですね。チャットワークかZoomが士業事務所の場合は最適解になる可能性が高いです。

旧来、ウェブ会議ってシステムを入れてウェブ会議室を作って、つまり100万単位の金をかけて設備投資しなければならなかったので、それなりの規模感がないとただの無駄設備になっていたのですが、今はノートPC、先述のSurface、iPadなど1つあれば2〜3人でしゃしゃっと始められるので、リモートであることの隙間を埋める作業として、弊社は最近かなり頻繁に社内MTGしています。

チャットワークは同じグループに入っていれば可能(無料版はどこまでできるのか知らん)、Zoomはリンクシェアしておけば何十人でもOK(無料版はどこまでできるのか知らん)です。恥ずかしいのか何なのか、カメラをオフにしてやる人がいますが、ウェブ会議の意味がないっす。非言語情報を交わらせる意味でも、カメラはあったほうが良い。

カーシェアとか小口とか


テレワーク系の要諦は、つまり持たなくてよいものを持たないに尽きるのかと思います。いわゆるサブスクリプション系のサービスも近年で一気に出てきており、合理的な範囲でサブスクリプションに申し込んでも良いかと思いますが、月額費用がかかるものが殆どですね(良いカモになります)。

東名阪以外のローカルでは車移動が今のところ必須で、サブスクですが基本料金なしのタイムズカーシェアは契約しておいて損しないです。僕の会社ではもう社用車自体を完全に廃止しました。あんまりテレワークと関係ないかもしれないが、在宅から直接役所に車で行くなどのリモートもできると思うよ。確かシェアサイクルも固定費なしのサブスク契約できたと思うのでそれぞれお調べのほど。

同時に小口現金を少しだけ持ってもらう感じですね。普段は僕の会社はスタッフ個人持ちの小口は用意しておらず、現金(振り込みもクレジットも。つまりお金周りすべて)を扱うのは決められた管理セクションのスタッフだけですが、有事のときには仕方ないよね。

マインドセット


書く順番が後ろになりましたが、一番大事なのは恐らくマインドです。社風とか各人の個性などによる部分も大きいかと思うが、正しいマインドを持ったメンバーでないとリモートは成立しないし、マインドセットがずれていると「あれ、こいつ何もしてねえんじゃね」みたいなメンバーが半ば強制的に浮かび上がってきてしまい、微妙な空気を感じることになります(そして会社に居られなくなりますね...)

そもそも、という話になってしまいますが、未経験で行政書士として独立して自宅兼事務所で1日中仕事して...売上伸ばして事務所借りて...スタッフ雇用して...何なら法人つくって...という履歴を持っている人には恐らく分からないことなのだが、自宅で仕事することってほとんどすべての人にとって基本的に無理なんですね。コンビニ営業に耐えられるのは社長(所長)だけ、という当たり前の事実を受け入れるところから始めましょう。

リモートだと通勤がなくて電話が少なくて営業が来なくて余計な間接業務がないから業務に集中できる〜という意見もあるようだが、「そもそも家だ」「周囲に監視がない」「設備がフルでない」などの条件を加味すると、やっぱり確実に生産性は下がります。生産性が上がるスタッフもいて、明らかにリモートのほうが集中して仕事が進んでいる事例もあるが、チーム全体としては下がりますね。

ある閾値(つまり事務所のことでいえば損益分岐点だと思う)をクリアできるのであれば、リモートの生産性をいかに上げるかを考えるのはナンセンスかもな、と思います。生産性が下がって当然で、それでも崩せないラインを死守するほうが健全なのではないかと僕は考えています。

リンク


本文に関係のありそうな諸々のリンクをまとめておきますので。

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