. 行政書士組織論: 大型化への予想

2017/10/03

大型化への予想

9月の終わり名古屋に出張しまして、業務上のスケジュールがあったわけではないのですが、現地の方や他のエリアからちょうど来ていた方など、同業の皆さんと会って話してきました。例年9月末はAIの決算や閑散期と重なることもあり、この時期に全国漫遊しております。

今期の漫遊でイケてる同業さんたちと話してきて、そこから気づいた点やこの先の業界予測などをまとめておきたいと思います。あとあれです、現地でも出た話ですが、塩谷が毎日このブログのようなことばっかり考えているわけもなく、俺こんな固い人間じゃないんですが、塩谷と長江ちゃんが普段電話やチャットでやり取りしている内容のまとめなんです、議事録っぽいというか。そこから組織化に関連するようなトピックを編集して上げておくという感じでございます。

1つ種明かしというか、それほど秘密にしてるわけでも崇高な理論でも何でもないんですが、AIのこれまでの経営戦略のトップ項目があります。日本の主要都市に営業所を置いて、都市型のテナントに若いスタッフを配置し、主に許認可周りの企業法務を多面的に取り扱いつつ、営業所間に点在する案件を横断的に受注する。本店を東京に置くことで地方エリアの同業者に優位性を確保する、というものです。これを表面的に表すと「国内主要都市圏で安定継続的に軽度から重度の企業法務に関する手続きを大量に処理し続ける」という、いつものお題目になります。

この経営戦略は当り前の話ですが、意図的にこの線を狙って経営しておりました。だからどこかの営業所の売上がガタ落ちして完全にコスト部門になったときにも、他の黒字営業所からお金を回してでも維持してきましたし、この戦略は10年スパンのものなので、よほどのことがない限り、変更されることはありません。これをやるために塩谷と長江は手を組んだと言ってもいいでしょう。

オランカエ予想という学説があります。市場は、こんな奴おらんか、というニーズを常に持っており、そのニーズを満たす存在がある場合、その存在に対してあらゆるニーズが集中するであろう、という学説です。この予想はまだ実証されておりませんし論理的に解説した人もいませんが、AIが多店舗展開を始めて5年、我々はこの予想を実地に体験しておりました。つまり、この路線でガンガンやってた、ということです。すいません全部嘘です。

ポアンカレ予想 - Wikipedia

言葉にしにくいのですが、この路線は良いのではないか、という仮説の基に多店舗展開しておりましたが、やはりこの線には強いニーズがあるんですね。んで、我々はこのニーズを一定程度掬っていたものと思われます。この点にはAIに競争優位性がありましたし、多店舗展開のノウハウは恐らく他所様より多少あります。

(余談ですが、名古屋の某巨大さんとお話していても感じたこととして、器には器に合った案件がもたらされるものなんです。非論理的だということは十分理解しているが、そうだとしか言いようがない。つまり、現状の自身のレベルにいる限り想像もできない巨大な案件というものが、世の中にはあるのだ、しかもたくさん)

んで今回の漫遊で感じたことですが、この優位性が相対的に弱体化してきているな、ということです。単体店舗経営も、多店舗展開も、その面だけを見てどちらが正しい、間違っているということでは決してなく、経営戦略の全体の中で単体が向くのか多店舗が向くのか決まるものと思いますが、多店舗に向く戦略のもとに多店舗を行う同業者さんが、この1年の間に増えていることを感じます。

(なお塩谷がこの稿でいう多店舗とは、一定以上のエリアの隔たりを前提にしています。緊密なエリアでの多店舗というのもアリだと思いますが、まだカニバリゼーションとかそこまで業界が成熟してねえべ)

多店舗をやっている事務所が、ここまでの5年はごく少数派だったんで、仙台東京福岡の3店舗を1つの法人として経営しているAIには、ただそれだけでその点の優位性がありましたが、今後はそうでなくなります。多店舗事務所が増えているんです。んでさあ、我々はどうしよう、ということを考え始めております。

まあ多店舗であるだけでなく、これらを繋ぐインフラの話や拠点毎の営業戦略、中身の人材についてのノウハウ、財務の運用などの点で5年分の蓄積があるので、すぐこの優位性が無効化されるとも思いません。言うは易し行うは日々修羅場、だしさ。これが気にならないことがどれほど無神経なことかあなたは知らない。ですが相対的には弱体化してくることでしょう。

単体にしろ多店舗にしろ業界自体は大型化の方向に進んでいるので、大型化に伴う社内制度設計という面では、行政書士の業界は途上というより、まだ何にもやってないという段階だと思います。ここからトライ&エラーを繰り返しながらこのノウハウも蓄積されていくことと思いますが、そもそも士業法人の制度自体が非常に窮屈なもので、これを政策的に改善していこうという動きも名古屋においてスタートしていることを付言して終わりに致します。