. 行政書士組織論: 何でも型と専門特化型のはなし

2014/02/14

何でも型と専門特化型のはなし

よく同業者の中で出る話題ですが、「新人~中堅どころは仕事を選ばず手広くやらないと食えない」という意見と、「はじめから専門特化して得意分野を持たないと食えない」という2つの意見の対立(というか視点)について、私見です。

組織論からは少し外れるかも知れませんが、組織を1点に積み上げる必要はなくて、同列平行で小規模のユニットを複数作るという組織もあり得ると思うんで、その点で日本というのは東名阪+α以外は地方の集合体でしょうから、ユニットの立ち上げ方としてエリア毎の戦略が違っていいと思うんです。

大体ガリガリやっている人の意見は後者の「専門特化」戦略が多いですね。大都市圏で著名な事務所なんかは主要分野がどどーんとある場合が多いように思います。

僕も開業する前には大いに悩み、色んな人に色んな意見を乞いましたが、説得力のある意見はやはり専門特化戦略でした。「何でもかんでもやってたらいつまでも半人前だよ」というようなことも、よく言われた気がします。巷間の開業本や開業ブログ、開業メルマガなども、大体この専門特化戦略を推す場合が多いんじゃないかと思います、多分。



実際に開業してからは、正にこの専門特化戦略(と呼べるほどかどうかはともかく)を採用してやってきました。今でも僕の所属するエリアの主要業務は3つくらいで、この3つで総売上げの90%くらいですかね。

この戦略のいいところは、同じことばかりやっていて業務が効率化されていくので、やればやるほど処理時間を短くできること、それに伴って売上げも上がること、正に「専門家」になるので紹介などの依頼が増えること、等です。いいことばかりだと思います。

だからと言って、僕が開業予備軍の方などにアドバイスを求められた場合、必ずしもこの方法を勧めません。この方法には大きな穴があることが、ぼんやり分かってきたからです。

ちょびっとややこしいんですが、内閣府のページに県民経済計算という数値が出てますので、是非一度ご覧くだせえ。

› 県民経済計算(平成8年度 - 平成21年度) - 内閣府

僕は仙台に事務所があるので東北地方の人間です。この県民経済計算から色々計算してみると、東北地方の生産高は日本全体の総生産(国民総生産=GDP)に占める割合は5~6%程度なんですね。

20%以上を締める首都圏と同じ方法論でやっていていいのでしょうか。

仙台市は政令指定都市で人口も100万人なので、経済もそれなりに厚みがありますが、宮城県内でも郡部に行けば大分様子が違います。某隣県に行けば、更に違います。

つまり田舎に行けば行くほど行政書士の仕事は少なくなりますよ、ということです。僕は仙台程度の規模がある都市だったから、専門特化でやってこられたんだと思います(ちなみに僕は行政書士の主要業務は許認可絡みの商事法務という前提で書いていますので)。

専門特化してみたはいいですが、そもそも開業したエリアにターゲットになる会社さんがあまりいなかったら、いくらその業務に詳しくても、仕事はあまり来ないかも知れません。建設業者さんがいない地域というのはないでしょうけど、依頼が月に10件来るのと1件しか来ないのでは、何だかもう全然違います。勘弁してくださいって感じです。

だから、専門特化なんて別にしなくたっていいんじゃねえの?と最近よく思います。

実際に、東北のある田舎町とその周辺で絶対的なポジションを確立しているバリバリやってる同業者とか、いるんですよ。専門特化もクソもなく開業当初から何でもやって、今でも何でもやってる行政書士さんです。

専門特化しなくても、No1戦略というのは採れます。例えばどこかの田舎町で開業した場合、特定業務で有名にならなくても、その町や近隣で開かれる会合などに皆勤したり、商工会や組合、消防団などとにかく経営者や経済人が集まる場所には積極的に顔を出して、その地域の「行政書士さん」として一番になる方法ですね。

セグメンテーションとかABスプリットとかのマーケティングの技法は、こういう局面でもしっかり使えると思うので、どうぞご興味のある方はグーグル先生で調べてみてください。

色んな依頼が来るでしょうから、何か特定業務を極めるという方向とは違うかも知れませんが、突飛もない案件ばかりということでもないでしょう。行政書士業務のボリュームゾーンははっきりしてますから。やっているうちに地域の主要産業や経済の構造などが見えてきて、効率的な営業方法が見つかったりするんじゃないかなと。

隣近所でしょっちゅう顔を合わせている依頼者であれば、ちょっとやそっとで余所に頼まれたりしないでしょうから、面と面を合わせる選挙活動型マーケティングというのは、結構強力な参入障壁にもなると思います、多分。

面倒くさい話になってしまいましたが、「開業したら専門特化しなければならない」というのは嘘ですよ。GDPの20%を持っている首都圏と、5%しか持っていない東北地方で、個人事業主の取るべき戦略が同じわけないのです。

何でもやっているうちに特定の業務が集中して他のが出来ない、という状況になったら、専門特化するのもいいんじゃないですかね。というか、その方が現実的ですよね。特化しないままずっとやるのも、全然いいと思いますよ。

自分が開業するエリアの特性というか、場所ごとに採用する戦略は変わると思うので、巷間の専門特化型戦略が味気なくてヤだなーと思っていても大丈夫だよ、他にも方法たくさんあるよってことです。
追記
東京みたいな大都市でも、逆に専門特化なんかしない方がいいんじゃないの?と思うこともあります。行くたび思います。
というのも、山手線沿線とか中央線とか、駅1つで十分なくらい畑があるじゃないですか。1駅分の会社全部お客さんにしたら、それだけで一生食っていけますよ。 
某お師匠さんの運営されているメルマガで書かせていただいている記事を加筆修正して再掲しています。
副業行政書士開業マニュアル [まぐまぐ!]