. 行政書士組織論: 500申請/1ヵ月を捌く業務デザイン

2014/12/13

500申請/1ヵ月を捌く業務デザイン

ご自身の所属する事務所、または経営する事務所で以下の様な相談を受けたらどうしますか?受けますか?
  • 入札参加申請の代行をお願いしたい
  • 申請件数は500、もちろん定時申請に全て間に合わせたい。入札参加という業務の性質上、1ヶ月で全部捌かなくてはならない
  • 事業自体が官庁との取引によるところが大きいので、入札参加登録ができないと会社全体の業績に大きな損害を与える
このブログのテーマは「行政書士事務所を組織的に運営するための論」なので、この業務は組織論としてはとても良いサンプルになると思います。

上記は実際に弊社で今動いている案件です(もちろん守秘義務の関係上、細部はちょっといじっています)。まだ終わっていませんので業務終了ではありませんが、終了までの地図が出来上がって後はやるだけになっているので、事実上(僕の中では)ほぼ終了です。

12月12日に1件目の申請を出して、1月中には全部終わらせる予定でいますので、年末年始休業を入れると事実上1ヶ月で500申請(しかも通常業務でパツパツになっているものにプラスして)出さなければなりませんが、必ず終わります。そもそもこういう案件を受けるために大枚叩いて士業法人なんか面倒なものをやってるので、できなきゃあこの業界に僕がいる意味が無いのです。

僕の所属する法人は全部合わせても行政書士5名、パートさんと新入りを合わせても全部で10名ちょっとの会社なので、言うほど大きくありません。この人員で500/1ヶ月を捌こうとする時、業務はバラバラに分解しなければなりません。

従来型士業のワークフロー


これまで、士業(行政書士)の世界でこの案件を受けたと仮定すると、以下の様な処理の仕方をしていたはずです。
  • 500件を10人で割り算して各人が処理する
以上。これでやりきろうとするから終わらないのです。或いは終わったとしても、処理する各人の業務能力に依拠する方式なので、いわゆる熟練工が大量に必要になります(熟練工10人を常に満足させられるだけの業務量/給料が供給できるならいいんですけどね、行政書士の事業戦略としてはどう考えても間違いでしょう)。

または以下の様なことをしようとするはずです。
  • 自社で300申請くらいを割り算して、残りを協力関係の事務所に振る
自社の処理能力の限界までやるが、終わらない分は他社に振るという方式です。これは本質的に上記の10人割り算と同じ考え方から生まれているので、協力事務所でも割り算をすることになります。解決になっていません。

また、これは「集団」ではあっても「組織」とは呼べません。組織は各人の属人性になるたけ依存しない形態でなければならんのじゃないの、と思います。

現代的なワークフロー


これを「入札参加登録」が「500件」あり、「1ヶ月」で全部終わらせなければならない、という塊で捉えてしまうと、「10人じゃできるわけない」という結論しか出てきません。

ですが、これを可能な限り細分化して分解すると、あら意外、できないこともないように見えてきます。以下のように分解してみます。
  1. 相談を受ける
  2. 申請する業務の定義を確定する(要件定義とか言います)
  3. 申請先を確定する
  4. 対依頼者用のワークフローを定義する
  5. 必要な会社情報を仕入れる
  6. 申請までのスケジューリングをする
  7. 業務内容を「申請書入手」「会社情報入力」「業務情報入力」「添付書類収集」「添付書類組合せ」「宛名印刷」「封入」「発送」などの作業に分けて、それらを割り振る
  8. 各人が作業をする
1から4くらいまでは渉外担当者の仕事です。これが一番大変な仕事だと思います。また、ここでどこまでディテールを決めきれるかによって、それ以降のやりやすさが全然違います。

6のスケジューリングが終われば、後は無理のない作業量を各人に割り振って、締め切りに向けて機械的に作業をするだけです。入札参加登録ですから、作業自体には高度な業務知識は必要なく、主に「様式の入手」「入力」「発送」など、大学生のアルバイトにでもできるような作業まで細分化できます。

入力すべき内容はエクセルで一覧にすれば、余程の凡ミスでもない限り書類自体は出来上がりますよね。作業まで分解したものが無理の無い作業量ではない場合は、社内で責任の重い順番から死ぬ気でやるしかないですね。

「多」対「多」を実現する技術


当然、これらの処理を可能にするためにはそれなりの仕込みが必要です。

我々のような法人の場合、個人事務所では絶対に受けられない案件を受けられるということが強力なUSPになるので、「多」対「多」の業務フローについては常に意識しています。業務フローの効率化は、この「多」対「多」を想定して作っておかないと、いざそういう案件が来ても上記の「従来型士業のワークフロー」のような対応をしてしまい、うまくいかないんじゃないでしょうか。