. 行政書士組織論: 案件の管理について一考察

2014/10/13

案件の管理について一考察

先日、親しくしている同年代の士業さんと、業務管理をどうしているかの話題になりました。一定以上の規模になるとどこも悩みは同じようなものですよね....。
これまで事務所を運営してきて、何度もこの業務管理については試行錯誤してきましたが、今のところまだ解決策といえるものは出来ていません。トライの途中です。

取扱分野によるでしょうが、年間でお手伝いする会社さんが300社や500社(またはそれ以上)、手続き数にするとそれより多いようだと、従来型のオーセンティックな「街の法律家」スタイルで管理しようとしても、非効率的ですし、そのうち破綻します。

(平均単価が低くて案件数が多い事務所(ex;自動車関係)など、どうやってるんだか謎ですよね。実務内容より管理業務のほうが事務所経営の根幹になってますよね)

現段階での僕の結論は、「時間軸」と「あいうえお」です。

管理と実務をはっきり切り分ける


「時間軸」と「あいうえお」の前に、前提として、物事を十把一絡げにしてしまわず整理整頓しておくことが大事かなと。

現在、弊社仙台事務所(僕が所属しているところ)では10人以下のチームで仕事をしていますが、全員に徹底してもらっていることが「管理」と「実務」を切り分けてもらうことです。

業務は何でもいいですが、例えば株式会社設立の依頼を受けた場合、依頼者や公証人と打ち合わせしつつ進めていく「実務」と、見積書を何月何日に送ってそのうち内金でいくらもらったか、立替をしているのか否かなどの「管理」は別々のことであって、これを一緒くたにしないことで、日常業務はだいぶ効率化するように思います。

ついでにいうと実務には専門知識が必要かも知れませんが、管理業務には行政書士としての専門知識は特段必要ありません。理路整然とした心があれば誰にでも出来ます(その心のほうが得難いかもしれないし)。

時間軸とあいうえお


僕のこれまでの見聞の範囲だと、行政書士さんはこれまで、案件を「依頼者ごと」に管理している場合が多いようです。他の事務所さんや先輩のお話を聞く限り、大体そういうケースが殆どです。

ですが、大小合わせて50件~くらいの案件が常時動いている状態になると、もう「フロー」と「ストック」に分けていくしかないので、「依頼者ごとに管理していく」という方法は不可能です。フローは今動いている案件、ストックは終わった案件です。

これを僕は時間軸による管理と呼んでいます。(言葉は横暴ですが)個別の依頼者を個別に認識しない、今どのような案件が動いているかにだけ着目する方法です。なので、例えばA社の建設業許可の決算変更届と一般貨物増車が同時に進んでいても、管理上は全く別の案件になるということです。

だって建設業の納税証明書と一般貨物の車検証が同じタイミングで手元に来るかどうか、わからないじゃないですか。であれば、これを「会社が同じだから」ということで1つの塊で管理することは、合理的じゃないんじゃないかな、と思うわけです。

終わった案件は、全て一様に終わった案件です。

あいうえおは、ただ単純に「フロー案件をあいうえお順に棚に整理しようね」くらいの意味です。以前は「建設業のボックス」「産廃業のボックス」「設立とか変更とかのボックス」「その他動いている案件」など分けていましたが、馬鹿らしくて辞めました。

「アリさん社の決算変更」「ゾウさん社の新規許可」「イヌさん社の増資」など案件に名前をつけ、これを無造作にあいうえお順に並べておくだけです。
その案件を直接担当していないスタッフでも、どの案件のファイルが棚のどの位置にあるかすぐに探せるので、管理業務もスムーズに動くようになりました。

この方法は、管理について悩んでいる時に、医療事務をしている友人から聞いた話からヒントをもらいました。その方の勤めている病院では患者さんを「症状ごと」には管理せず、単に「名前順」で管理しているそうで、言われてみれば当たり前なんですが、なかなか気付かないものですよね、自分のことってね。

あとは非常に細かい話ですが、案件を管理するファイルなど、事務用品を統一することですよね。買い足すたびに色んな事務用品を買うと、フラットで並列的な整理ができないので、うちでは完全に同じものしか買わないことにしています(選ぶ基準はもちろん「用を足すもので一番安いもの」ですね、当然ね)。

ついでに、上記に関連して弊社では以下の様なことに気を使っています。
  • 整理整頓を旨とする
  • 担当制の廃止(スタッフ全員が全業務に携わる)
  • 案件ごとの進捗状況はこまめに進捗ファイルに書き込む
  • 物理的にまとめることで頭の中もまとめる
大体こんなところで、おそらく今の方法ももう少し事業規模が大きくなるに連れ、間に合わなくなることでしょう。その時には業務管理システムを大規模に導入するなど検討しなければならないでしょうが、今はこれで凌いでいこうと思ってます。