. 行政書士組織論: 士業法人を買うのは誰か

2016/03/17

士業法人を買うのは誰か

お世話になっております。塩谷です。

このブログのアクセス数トップ3は、全て「今後の行政書士業界はどうなるか」という私見を述べさせていただいた未来系の記事です。面白いもので、一見人気の出そうな「こうすれば売上が上がると思うよ」系の記事はさっぱりなんですね。

行政書士組織論なんて大仰なテーマを掲げておりますから、やはりアクセスしてくださる方も短期的な売上云々のことよりも、中長期的な業界動向などのほうを気になさっているのかな、と思います。そもそも、このブログをご覧いただく方は短期的な売上に困ってねえ、という単純なことなのかもしれないです。


さて、前回こんなことを書きました。

行政書士組織論: 行政書士業界の小ささ
士業法人に民間出資が可能になれば、士業のマーケットそのものが民間サービスの一部門(の端っこ)に集約されていくと思いますが。そして、その規制緩和については(資料なくしたんでどこで読んだか覚えていませんが)議論自体はされているはずです。
その資料が見つかったので、再度しげしげと読みましたが、まあ恐ろしいことがガンガン書いてあり、もう廃業して隠棲しようかと本気で思いますよね笑。ぜひお目通しくださいませ。

規制改革推進のための3か年計画(再改定)II重点計画事項18.法務・資格

なお、この「規制改革推進のための3か年計画」は資格業のことだけでなく、様々な分野の規制改革についての提言がまとまって形作られているので、時間をかけて全体を読んでみると面白いです。将来の飯の食い扶持が山ほど眠っています。

規制改革会議 - 規制改革推進のための3か年計画(再改定)

付言すると、この時の内閣総理大臣は第92代麻生太郎さんですから、現在の第96代安倍晋三さんとは当然昵懇ですし、現在の内閣も基本的にはこの計画の延長線上にあるものと言えると思います。ですから、基本はこの線で、ということになりますね。

続けて余談ですが、僕は福島沿岸部生まれの仙台育ちというバリバリの東日本大震災被災地域っ子ですが、この震災のタイミングで政権与党にあったのが民主党だったということが、まるで精妙な小説のような悪夢だと思えて、なぜ何十年も続いていた自民党政権がよりによってあの震災を挟んだたったの3年間だけ民主党政権に変わっていたのか、という巡り合わせを考えるに、絶句するほかありません。余談終了。

上記の提言145ページに、件の「資格者法人の社員資格の拡大」について記述があります。この「社員資格を資格者以外にも拡大すること」の是非については議論の余地がある旨記載があるものの、資格者以外が社員になることについての要件というか、適格性云々は出てこないんですね。

つまり、仮にこの規制緩和がなされたとして、士業事務所が合同法人を作れるという方向で議論がされているというより、資格法人の出資を無資格者へも開放する、というベクトルの議論のようです。実際にこれが行われるかどうか、行われるとしてどの程度の角度になるのか僕には分かりませんが、十分可能性のある場所で議論されている、ということですね(神田のお好み焼き屋とか中洲のラーメン屋とかじゃなくて笑)。

例えば、僕がちょっと大きめの規模の損保代理店を経営していたとしましょう、巷の士業法人なんてもう、明らかに買いですね。買いまくりますよね。だって資格業で利益を出す必要がなく、損保業務に結びつければそこで十分利益を取れますから、間口がガバガバの入り口として士業法人を持っておけばいいんです(資格業と保険業の親和性は我々が日々受けている保険屋さんからの熱い提携提案から明らかな通り)。

さてでは、我々はどうすればいいのかという議論になりますが、もしこれがOKになれば、買う側になればいいのではないかと。あるいはこちら側は出口戦略として、できるだけ高く売ればいいのではないかと。僕ははっきり言って会計事務所を買いますね、真っ先にね。

売り買いだけの話だけをすると無味乾燥ですけど、例えば税理士の求人を出し、その税理士と共同で税理士法人を作り、自分も社員になるということが可能な規制緩和だと言えるでしょう。これは資格業そのもののパラダイムシフトとも言えることで、業は行いたいが資格がねえ、という問題を一気に解決することにもつながりますよね。一気に業界が大型化することになると思います。

これを行政書士のピンチと見るか、チャンスと見るかは人それぞれだと思いますが、資格業という枠組みの中で言えばまだ未開の分野が大量に残されたフロンティアなので、どう見てもチャンスだと(僕は)思います。