. 行政書士組織論: 虎の子と熱血について

2019/09/09

虎の子と熱血について

お世話になっております、塩谷です。

テーマがマニアック過ぎてほぼ誰の目にも留めていただけないことで、ある意味著名な当ブログですが、マニアックなものは興味がある方には結構刺さるという特徴もあります。絶対数が少ないだけで、興味を持たれる方がいないわけではない。で、僕はこのブログからお金儲けしようなんて思っていないので、数なんてどうだっていい。先に意見表明をしておくと実際に会った時に話が早いんや、お前こんなこと考えてるんだろ、みたいな。

その数少ないディレッタントの方々から、もうちょい更新頻度をあげよ、とお叱りをいただいております。この稿の続きを読み進める前に、まずは以下のリンクから青い本をカートに突っ込んでいただけると私は嬉しい。いや、僕に大してお金は入らない(よほど重版しない限り初稿分で終わり。だから刷った段階で金額は決まっており、売れるかどうかは僕の身入りに関係ない)。だがせっかく出させていただいたので、できるだけ多くの方にお手にとっていただきたい。




先に告知が必要なことをまとめてしまいますが、今度は名古屋でお話しさせていただきます。テーマは王道許認可をフックにしたチームビルディングについて。東海地方の方はぜひ。



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お気づきだと思いますが、もしかして塩谷って他人様が作ったスキームに乗っかってるだけじゃね?とお考えの方がいれば、完全に正しいです。言わば乗っかってるだけで、別の言い方をすれば他人様と協力して活動しています。自分の常識だけで生きていても、つまらないよね。

本題に入りたいと思います。論旨を先にまとめると、もしかして組織維持よりスタッフ優先の時代なのかもしれないということですね。(士業にとって)法人にして組織を作るのは平成的、では令和的な組織観ってどういうものだろう。

定期的に開催されているものですが、全国行政書士法人会という集団があり、この例会で研修、意見交換会のようなことをしています。先日開催された第3回では船井総研さんから4人も来ていただいて、業界の人事トレンドのことをレクチャしていただきました。採用にはこの媒体使うといいよ、というような豆知識もサラサラと出てきますが、さすがこういうノウハウを無限に持っているのは日々業界リサーチをしている事業者さんの強みだなと、俺そういう情報全く持ってないもの。例えば、6年前と現在で行政書士の受験者数が35%減ってるってご存知?僕は知りませんでした、恐ろしいことです。



業界の採用人事トレンドについてとてもロジカルな解説をしていただきましたが、このことを縦軸に、行政書士業界が士業の中でも市場規模が最も小さい(=採用規模も最小)ことを横軸に考えると、自社が中長期的に想定している事業規模を超えて採用したらぶっ壊れる、採用にもアクセルとブレーキ同時踏みのような事態が容易に想像される。つまり、行政書士業界で売上単体1億というと近年では結構ザラになってきて、1人年売り800万計算だと大体12〜13人、2億で22〜25人くらいなので、一気に10人採用ということは殆ど起きないんですね。また、1人採用のインパクトが大きくて、10人事務所だと1人採用で人員構成の約10%変わってしまうので、これらを重ねて考えると、現実的には1人をじっくりじっくり吟味して恐々採用する、というのがスタンダードなのかと思われます。

更に、少子高齢化など私たちの力ではどうしようもない大きな潮流の中、上記のじっくり吟味して採用する1人でさえなかなか集まってくれないようになっていて、チームを作るという作業そのものが難易度の高いものになりつつあります。

すっごい乱暴な言い方をすれば、5年くらい前まではまだ良かったんですよね。売上さえ立てられればスタッフが入れ替わるのは「しゃあない」で済むことも多かったと思われ、売りが先、人は売りについてくるもの、のような世界は確実にあったと思います(更に付言すれば、完全に良くない風潮だと思いますけど、士業の世界って資格業=自己実現みたいなところあるでしょ、資格商売で働ければ私は本望です...みたいな。キモいよね、その心理というよりそれを内包している業界そのものが)。首都圏その他の大都市圏ではこれが崩れつつあり、数年前から「仕事はある、でも人が足りなくて受けられねえ」という話を良く聞きます。

それでもなんとかかんとか採用するんですが、業務にうまくフィットしないとか、入ってみたら思ってたんと違うと辞められたりとか、丁寧に業務を教えたところで独立しまーす!みたいな笑、いや全然笑えないんですけど、じっくり吟味した1人さえ全員が定着してくれるわけではないので、行政書士事務所に定着したスタッフというのは、それはもう全員が虎の子になるわけです。

令和元年の現時点では、としますが、行政書士事務所を運営するにはチームを形成して定性的な組織を維持する方が事業上合理的です。定量的でランダムな組織を作るには行政書士そのものの制度設計が柔軟じゃないと思っています。簡単に言えば、雇用スタッフを複数配置する運営が合理的という意味です。虎の子を時間をかけて育て、教育し、自社にフィットする人材になっていただくのが得策かと。

教育プログラム、将来ビジョンの浸透、キャリアモデルの提示などの施策が必要になるということですよね。もちろん売りがなければこれらの施策も絵物語なので、事業を安定継続的に発展させるモデルも不可欠です。中小零細の親父の悩みは売りと人、とは昔から言われていることですが、俺今更このことに気づいてんのね笑、阿呆なのか馬鹿なのか、それとも見て見ぬ振りをしてきたのか。

違う角度から言えば、行政書士の業界もやっとこの中小零細に追いついてきたということで、ポジティブに捉えられるかなと。ちなみに将来ビジョンやキャリアモデルなど、どちらかというと熱血っぽい方面の話になりがちだと思いますが、塩谷はこういうのすっごい苦手です。恥ずかしくて何を話せばいいのか分からない。もっとフラットに平熱でこういう話をできるようになれば、私も会社の皆さんも、次のステップに進めることでしょう。