. 行政書士組織論: 大型化への予想(2)

2022/01/11

大型化への予想(2)

お疲れ様です、塩谷です。2021年もたくさん働きましたね、きっとこのまま毎年忙しく働くのが続くと思いますが、私働くの好きなので全然構わないです。2022年もたくさん働きます。

いきなりですが、4年ほど前に以下のような記事を書きました。


私達の業界にも店舗展開の手法が一般化し、大型化が進んでいくだろうという趣旨です。その後私自身の状況も様々変化があり、かつ業界にもコロナの嵐が吹き荒れたことにより、この展開は小休止していたように思いますが、情勢が安定してきた(この感染症がなんとなく分かってきた)ことで再び活性化してきたみたいです。

個別に会社名を出すことを控えますが、2021年から2022年にかけて、地方都市で大きく事務所経営をしている友人各位から、新しく東京に事務所を出すのだと聞かせていただいて、4~5社くらいでしょうか。本格的に東京進出されるそうです。良いですよね、皆で活発に情報交換して新しいことを始めたら良いのだ。我々はそれが許されているのだから。

その多店舗化の方向について私の予想が当たって偉いとかそういうことではなく、こうなることは順を追って考えれば分かることなので、この先もきっとどんどん増えると思います。私はかれこれ10年近く地元と東京の多拠点営業をしてきてこの手法のメリットをよく知っているつもりで、やるところまでが結構大変なんだが、やれるんだったらやらない手はないと思うのね。

なぜ大阪、名古屋、神戸、広島、仙台など地方都市の同業者が東京に出すのかというと、東京が真ん中だからです。それぞれの地方都市はそれぞれの地方の中心で、いわゆる地方都市圏で言えば真ん中なんだけど、この都市圏の中枢であっても限界が見えてくるんですね。それで東京行ってしまおうとなります。真ん中にすべてが集まります。

若干抽象的なので具体的に書き起こすと、主にBtoBを基本とする行政書士業務はその地域にどのくらいの業務量があるかで売上のアッパーが決まる(=地域の人口で大体どのくらいの規模の事務所が作れるか決まる)のだ。人がいないところに会社はないし、会社がないところに行政書士のお仕事はないのだ。それで、私が現在も生活の本拠を置く仙台市は東北地方の中心的な都市であるとはいえ、仙台都市圏の人口は250万人で、すぐに大体のアッパーが見えてしまうんですね。

(商圏人口100万人あたりでいくらくらいの事業規模が作れるか、まだざっくり計算もしてないけどやったら面白いと思う。どのエリアで開業するとどこまで売上伸ばせるかの目安になる)

日本で第2位の都市圏は関西大都市圏で、大まかに大阪、神戸、京都あたりを合算した人口は1,900万人くらい。仙台都市圏の7~8倍で途方も無い大都市だけど、なんとそれでも関東大都市圏3,800万人の半分です。そりゃ東京行くよ、私達は規模だけを求めている訳ではないけど、事業をしていて東京に出られるチャンスがあれば行くのが経済合理的でしょう。以前横浜の同業者さんが東京オフィスをどうするか検討されていて、私はいらんのじゃないかと話した記憶がありますが、横浜は関東大都市圏の一部として既に東京が営業圏内なので、そういう意味で横浜は東京なので。だからご自身が所属する都市圏の中心から営業エリアが離れている場合は、まずその地方都市圏の中心に近づくのが行動方針としては正しいのではないか。

ここまでは前段で、本旨は以下です。つまり5年前は殆どいなかったローカル発の東京組(多店舗展開ともいう)が増えているし今後も増えるんですが、私はこれを想像力の産物だと思います。ファーストペンギンは誰かは置いておいて、誰かがその行動をし始めたから業界ではそれが想定の範囲になるのであって、私達にとってこれはもう想像できるし実現できることになったと思うんですね。

今ではもう隔世の感がありますが、20年前には行政書士が独立開業して1,000万円を売り上げるというテーゼは強いインパクトがあったんですね。ですがそのテーゼが共有され一般化された現在ではもう大きな意味を持たない数字になっています。私達は想像できない場所はそこに行こうとさえ思えないが、想像できれば難なくクリアできるのだ。だからきっと私達行政書士の業界では更に事務所の大型化が進み、都市圏間を繋ぐ事務所が増えることでしょう。

その先にあるのは事業承継やM&Aの未来...と言いたいところなのですが、そんなうまく行かないと思うんですよね。順当な展開を考えればそうなるのが整合的なんでしょうけど、世の中そううまくは行かないよね。もちろん承継などできれば規模の経営にはとても有利だと思いますが、今の日本式経営や超々々々々属人の業界構造からして、承継やM&Aが成功するのはかなり特殊な状況における人間関係などから偶発的に起こるレアケースだけだと思います。

売買の当事者双方がお互いのそろばんだけで話せる土壌ができればまだ可能性があると思うんだけど、日本のM&A市場そのものがまだまだそうなっていないし、況や士業をや。士業は基本は事務所=所長先生の世界ですからなかなか難しいですよね。語弊があることを承知でいうと買い手にとっては商品、売り手にとっては人生ですから。そんな不確実な手段を事業展開の基本方針に入れておくことなんて普通できないので、できたら超ラッキーくらいのニュアンスではないだろうか。